ど素人、黄表紙をよむ

独学で黄表紙を読み、悪戦苦闘の成果をさらす。恥知らずの野暮天ですみません。

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方言競茶番種本⑩

■ふんどしの子、太五助

太五助全身

「ヤア/\、しばらく/\。
 そのふんどしの主はこれにあり」

部屋の戸引き開け、太五助はずっと出、
 
  太五助 「ハハア、始終の様子は承る。
       それがし独身の徒然(つれづれ)
       ふと思い付き、あてなしの夜這いと出かけ、
       女部屋へしけこまんと致せし所、
       思いもよらず奥さまのお目にかかり、証拠となりたるそのふんどし、
       お手に入りしは逃れぬ落度、御家法を背きし大罪、
       いかようにも御成敗あそばしませ」

と、悪びれず、主人をかばう太五助が、心に立つるひとつの功。
それと察して、呑太夫が安堵の思い、
お酌は案に相違して、

  お酌 「ハテ、こころ得ぬ。
      みづからが見覚えのあるこのゆもじ、
      確かに主は知ったれども、横合いから太五助が、
      自身にそれと名乗り出すとは訝(いぶ)かしい。
     
      コリャ定めて人の難儀を見るにしのびず、
      そちが代わって身に引き受ける、などという様なことではあろう。
      サア有り様に言わぬか」

と、呑太夫を尻目にかけての問状(といじょう)に、
太五助いよいよ恐れ入り、

  太五助 「なんの人の身の上なら、高みで見物いたす拙者、
       必竟(ひっきょう)この身にかかる落度、
       隠しても隠されぬ、この場の次第に覚悟を極め、
       名乗って出る上からは、すこしも相違はござりませぬ。
      
       さりながら面目次第もなきそのフンドシ、
       さだめし奥さまや女中がたは、
       あの男も気のきいた風をして居ながら、
       この様な煮〆たような薄汚いフンドシをこいておったかと、
       お蔑(さげし)みもござりましょう。

       しかしそのフンドシは、私めが親のフンドシ、
       真っ黒に油染みましたるは、親父が金玉の油。
       それを親とお思いまして、今日まで肌身をはなさず、
       締めましたそのフンドシは私の親、
       私はそのフンドシの子でござります」

と、かたるにつけて薄汚く、お酌はつまみて放り出し、

   お酌 「ムム、そなたの親はこのゆもじ、ゆもじの子と言やるからは、
       さてはそなたは、ふってゐやるの」

  太五助 「ハヽッ、なるほど雪のふるたび爺親(てておや)
       疝気にて悩まれしその時は、 
       親子の違いもかなしい事も、まだわきまえぬ唐辛子。
       声がわりして年もたけ、にきびは顔に出来たれども、
       ふんどしをこくすべも知らず、ふって暮らせしこの年月。
    
       母者人(ははじゃびと)の恵みにて、
       不思議にもそのふんどし、私へ譲り受け、
       ハヽッ嬉しや喜ばしやと、
       その日より片時もは離さずこいたるふんどし。
       
       そのふんどしゆえに家内の人々へご不審かかり、
       しばらくも忠臣をくるしますは私が科(とが)
       もはや下宿(したやど)へさがりまする。
  
       今まではあなたがたの、お目をかすめし段、
       お情けには女中がた、お詫びなされて下さりませ」

と、ほろりとこぼす一滴(ひとしずく)
涙にあらぬ水洟(みずばな)なり。



問状:奉行が取り調べのために、当事者や証人に発給する文書。
  
ふって:フリチンで。

下宿:安価で下等な旅館、安宿。
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野暮天のサチ

Author:野暮天のサチ
江戸のおもしろ文学『黄表紙』を読み始めて1年余り。
ど素人の独学なので試行錯誤中ですが、あまりにも面白いので、みんなにも「黄表紙読み」をお勧めしたいと思ってブログをはじめました。

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