ど素人、黄表紙をよむ

独学で黄表紙を読み、悪戦苦闘の成果をさらす。恥知らずの野暮天ですみません。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

方言競茶番種本⑨

■お酌のふんどし改め

お酌と女中

  お酌 「若党の利金太はじめ、ひとりびとり帯解いて、裸になりや。
      ふんどしこいてるなら許してやる、   
      "無ふん"のものは不義の当人。ソレ/\」

と、指図に従ひ女ども、立ちかかり、

  女衆 「サア/\、奥様の仰せ。
      みなの衆、ちゃっとフンドシにならんせ」

と、ひっ立てられて利金太は、

  利金太 「ハイ/\、私めはご存知の通り、若い時からの疝気持ち。
       狸の金ほどでっかいな、袋に入れて厄介もの、 
       なか/\越中フンドシでは、粟津(あわづ)の森のみそさざい
       木綿も長尺一丈あまり、なければならぬで紙子のふんどし、
       きれて破れて、かくの通り」

と丸裸。ひと目見るより、

  お酌 「ヲヽ、利金太には構ひない。次の男を改めよ」

と、お酌がことばに飯炊き親仁、

  飯炊き 「ハイ/\、わたくしめは憚りながら、
       下さまの御奉公は致しておれど、
       生まれついて、木綿フンドシ大の嫌い。
       お給金玉二歩あるうえ、フンドシまでも一歩絹、
       しめて三歩は何ごとが、ありても肌身はなさぬ男。
       不躾ながら…」

と、裾ひきまくり、見すればこれも疑いはれた。

「後を銘々改めよ」と、ことばの下より草履取り、
そのほか雇いの下部(しもべ)まで、残らず裸になりひさご
ぶらつく所を締めつけし、ふんどしお目にかけがえは、
ござりませぬと平伏す。

  お酌 「ヲヽ、みなの者の詮議はすんだ、この上は我が妻
      政道は、えこ贔屓なきを第一とするとやら、
      家のあるじとても男なれば容赦はない。
      念のため丸裸になって、お見せなされよ」

と、半分きかず呑太夫、

  呑太夫 「アヽ、コレ/\。身ども、左様の覚えはないぞ」

  お酌 「イエ/\、お覚えなければなおの事、ぜひに/\」

と政道を、表に世話を焼き餅の、下心とは見てとりながら、
覚えある身の呑太夫、うろ/\きょろ/\逃げ出すを、

  お酌 「どっこい、そうは虎の皮。
      ふんどし改めぬうちは、貧乏ゆるぎもさせませぬ


と、お酌はとって引っかえし、

  お酌 「サア/\、みなの者への面晴(おもは)、はよう/\。
      エヽ、聞こえました、日頃からのおまえの素振り、
      わしゃ合点がゆかぬと思うたが、コリャこの越中ふんどしは、
      さてこそお前のに違いない」

  呑太夫 「イヤ/\、身どもは知らぬ/\」

  お酌 「そんなら帯解いてお見せなされ。
      但しはみづからが手をおろしましょうか、
      サアそれは、サア/\/\/\」

なんと/\と手詰めの切羽、ぬきさしならぬお酌が指図に女ども、
呑太夫を押っとり巻き、裸になさんとひしめく所に、

ヤア/\、しばらく/\。
 そのフンドシの主はこれにあり




疝気:男性の下腹部~陰部が痛む病気の総称。
    腸炎、寄生虫症、前立腺炎、脱腸(ヘルニア)などを含んでいたらしい。

狸の金ほど~:「でっかい」「やっかい」で韻を踏んでます^^

粟津の森のみそさざい:「合わず」と「粟津」をかけた地口。
            地口については→こちらを参照されたし。

一丈:十尺=約3m。一般的な褌よりもかなり長い。
    ちなみに越中褌は腰ひもに1mくらいの下がりをつけただけのシンプルなもの。
    六尺褌の下がりの長さは約180cm。

紙子:紙衣ともいう。厚手の和紙を柔らかく仕立てて作った布。
    丈夫で持ち運びに便利らしく、防寒着や羽織などにも使われていた。

お給金玉二歩:「お給金二歩」と「金玉二個」をかけている。
           二歩:お金の単位「二分」のこと。
              一両=約7万円で換算すると、「二歩=二分」は約3万5千円。

裸になりひさご:ひさご=ひょうたん。「裸になる」と「ひさごがなる」をかけている。

貧乏ゆるぎ:「貧乏揺るぎもしない」=少しも動かない。

面晴れ:疑いを晴らすこと。

スポンサーサイト

« 方言競茶番種本⑩|Top|方言競茶番種本⑧ »

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://kibyosi.blog.fc2.com/tb.php/62-edf2a4fd

Top

HOME

野暮天のサチ

Author:野暮天のサチ
江戸のおもしろ文学『黄表紙』を読み始めて1年余り。
ど素人の独学なので試行錯誤中ですが、あまりにも面白いので、みんなにも「黄表紙読み」をお勧めしたいと思ってブログをはじめました。

この人とブロともになる

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。