ど素人、黄表紙をよむ

独学で黄表紙を読み、悪戦苦闘の成果をさらす。恥知らずの野暮天ですみません。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

桃太郎発端話説(ももたろうほったんばなし)⑤

05右

そうして、すずめは正直夫婦の愛しみをうけ、
籠中(こちゅう)の苦しみもなく放し飼いになって暮らしていた。

しかしある日、のどかに日当たりに出て遊んでいるうちに、 
となりの慳貪婆の洗濯のりとは知らず、
たらいにあった姫のりをしたたか舐めたところ、
慳貪婆が見つけ、とんでもなく腹を立てて、
すずめの舌をちょっきりと切り、思い知らせてこました。

  慳貪婆「のりをみんな、せしめうるしと出た。
      厚かましいすずめだ、 
      牛のツノの切り口太いの根付けときたわ。
      どうだ、すさまじかかろうがや。天井を見たり」

  雀「まったく生塚のばばあ六道の辻の舞台顔ときたわ。
    この仕打ちは故人天幸もどき。
    すずめに憂き目をみせるからは、タケノコばばあではないか。 
    いまに思いしらせてくれん」


05左

口はわざわいの門、舌はわざわいのもと。
すずめは、慳貪婆の姫のりをせしめて舌を切られ、いまさら面目なく、
飛ぼうとすれど、のりをしたたか舐めたので羽も体も板天神ときて、
もとの古巣へも帰りがたく、
「死ぬよりほかなし」と浜辺に向かってさまよい歩いて来た。

稚児ヶ淵の白菊古池の蛙になったかという仕草で、 
どんぶらこと飛び込んだが、体のノリは溶けたが寒の内だったため、
体が凍ってハマグリになったとは、こじつけらしいことだ。 
まことに「あさりはまぐり、のりうりをする」という言葉も、根拠があることなのだ。

実方の一念が化したすずめは、ほどあって、稚児ヶ淵の歌を詠む。 
あおものづくし。

もろこしに ゆりのねかやと やまうども
 むかごのいもで はだな あぶらげ


"いっそ、この身をすずめ(沈め)"に、かけてそうじゃ。





【注】
姫のり:飯で作った糊。洗濯や障子張りなどに使う。

せしめうるし:「せしめる」とかけた洒落。
        瀬しめうるしは、漆(うるし)の木から取ったままの漆液のこと。器具の修理などに使う。     

牛の角の切り口、太いの根付け:「太い」という意味の洒落(地口)。
                ここでは「(糊を食いやがって)ふとい舌だ」という意味。
                根付は帯から下げる煙草入れで、高級なものは象牙や牛の角で作られた。

天井を見たり:思い知ったか。ざまあみろ。
       「天井を見せる」で「ひどい目にあわせる」の意味。

正塚の婆:奪衣婆ともいう。三途の川で渡し賃を持ってこなかった人の衣服をはぎとる婆。

憂き目:原文は「うきね」と表記されているけど、誤字っぽい。

六道の辻:京の都と街外れの寺社地区との境目。あの世とこの世の境目と考えられた。

故人天幸:歌舞伎役者の2代目中島三甫右衛門(屋号"中島屋"、俳名"天幸")と思われる。
      すさまじい悪役が当たり役の名優で、1783年に58歳で亡くなってる。
         二代中島三甫右衛門(豊国)豊国が描いた2代目中島三甫右衛門(「古今俳優似顔大全」「中島家系譜」より)

板天神:板で作った天神様の像。姿や様子が四角ばっていることのたとえ。

稚児ヶ淵の白菊:稚児ヶ淵は江ノ島にある崖。
         鎌倉のお寺の稚児(男子)白菊が江ノ島に百日詣でに行った際、
         坊主にしつこく恋慕されて崖から身を投げた伝承がある。
         この話をもとにして、歌舞伎『桜姫東文章』も作られている。

古池の蛙:松尾芭蕉の有名な句からの引用。

・「もろこしに~」:「いっそこの身を沈め~」は前述の歌舞伎の台詞と思われるが、
           どういう洒落で「青物(野菜)づくし」なのか不明。
           野暮天ですんません…。

・「浅蜊 蛤 海苔売りをする」:元ねた不明。ちなみにネットで調べたところ、
           木更津では浅蜊・蛤・海苔は昔から名産品の3点セットだという記述を見つけたので、
           江戸前の海産物の売り声にかけた洒落かも知れない。
スポンサーサイト

« 桃太郎発端話説(ももたろうほったんばなし)⑥|Top|桃太郎発端話説(ももたろうほったんばなし)④ »

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://kibyosi.blog.fc2.com/tb.php/6-3615e26f

Top

HOME

野暮天のサチ

Author:野暮天のサチ
江戸のおもしろ文学『黄表紙』を読み始めて1年余り。
ど素人の独学なので試行錯誤中ですが、あまりにも面白いので、みんなにも「黄表紙読み」をお勧めしたいと思ってブログをはじめました。

この人とブロともになる

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。