ど素人、黄表紙をよむ

独学で黄表紙を読み、悪戦苦闘の成果をさらす。恥知らずの野暮天ですみません。

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方言競茶番種本④

■酒本家のお台所

お勝手の方では、にわかに騒ぐ下女はした。
お茶よ、お菓子よ、煙草に盆、ガタヒシ開くる、ひと間の障子。

呑太夫の顔アップ

あるじ呑太夫ずっと出て、

  呑太夫 「コリャ/\女ども。
       横好殿へのもてなし、御酒・肴の用意いたせ。
       おなべ、それなる釜の下、こっぱクズか炭俵、
       心附け木に火をうつし、焚きたて焚きたて、湯をわかせ。
       その内棚なる鰹節箱(かつぶしばこ)、
       おろしてごし/\、合点か。早う/\」

と下知すれば、
「心得ました」と下女おなべ、鰹節箱を引出せば、
呑太夫はっと心付き、

  呑太夫 「コリャ/\おなべ、もしも油断を見すまして、
       鰹節を猫めがさらわば、いかに/\」

おなべと猫 (←下女・おなべ)

  おなべ 「ハヽ、仰せの通りでございましょう。
       その時こそは床の下、天井屋根うら揚板の、
       下に猫めが隠るるとも、命にかけて訪ね出し、
       この板の間に鼻づらを、こすってお目にかけましょう」

  呑太夫 「ホヽでかした/\。
       シテ、新参の太五助めはいづくにおる」

太五助アップ (←奉公人・太五助)

  太五助 「ハヽッ、拙者めに御用かな」

  呑太夫「いかにも/\。
      その方、是より新道(しんみち)の豆腐屋へまかりこし、
      豆腐小半丁とってまいれ。早う/\」

  太五助「ハヽッ、委細、承知仕る」

と、そのまま飛びおり、尻ひっからげ、太五助いさみの声高く、

  太五助「豆腐の御用をつとむるそれがし、
      もしもや切れたのなんのかの、
      酢のこんにゃくのとぬかすが最期、
      その豆腐屋の宿六(やどろく)めが、
      そっ首を引き抜き立ち帰らん」

と、踊り上がれば、おなべはぬからず

  おなべ「イヤ/\/\、血気にはやるは油揚(あぶらげ)/\、
      奴どうふと侮られ、田楽ざしの用心あれ」

  太五助「ハヽヽヽ、いらざる世話を焼き豆腐

と、味噌こし小脇にかいこんで、飛ぶがごとくにかけり行く、
あと打ち見やり、

  呑太夫「エヽ、しなしたりわすれたり。
      ついでに大根唐辛子、葱もいつしょに買わすべきもの、残念/\。
      コリャおなべ、太五助を呼び返せ」

と、言う間もあらせず立ち帰る、
太五助が大わらわ、表口より大音上(だいおんじょう)…



酢のこんにゃくの:なんのかんの。あれやこれや。

宿六:ろくでなし

油揚げ油揚げ:「あぶない、あぶない」とかけた洒落。

奴どうふ:奴(やっこ)=雇われの身分の低い者、とかけた洒落

田楽ざし:反撃にあって串刺しにされることを、田楽に例えている。

世話を焼き豆腐:「世話を焼く」と「焼き豆腐」をかけて、
         おなべの洒落に洒落で返している。
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野暮天のサチ

Author:野暮天のサチ
江戸のおもしろ文学『黄表紙』を読み始めて1年余り。
ど素人の独学なので試行錯誤中ですが、あまりにも面白いので、みんなにも「黄表紙読み」をお勧めしたいと思ってブログをはじめました。

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