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方言競茶番種本③
■不意の来客―下手の左衛門横好
こんな折から玄関先、「不時のお客の御入りなり」と、
わめきたてる声につれ、この家の主(あるじ)呑太夫、
衣紋あらため出迎えれば、入り来る客も浄瑠璃好き。
諸事、人形の身振りにて、悠々として座につけば、
呑太夫威儀を正し、
(←呑太夫)
呑太夫 「コレハ/\、下手左衛門横好(へたのさえもんよこずき)どの、
まずもって御健勝で珍重/\」
(←下手横好)
下手横好 「されば/\、其元(そのもと)にもご安体。
それはともかく、只今それがし、まかり越したは、
チト折り入って其元へ御無心申すことがござるて。
ナントお聞き届け下さりょうや」
呑太夫 「コレハ/\御挨拶。
日ごろ貴殿とは水魚の交わり、申さばお互いのこと。
御用あらば何なりとも」
下手横好 「ホヽヲ、早速の御得心、まずは喜び申し上げる」
呑太夫 「シテ、その御無心とは何の御用」
下手横好「イヤ、特別の事情でもござらぬ。
今日それがし所用あって、御門前をまかり通る折から、
かねて昨夜より虫腹をこうむり、
はばかりながらくだり続け、只今も腹痛はなはだしく、
しきりに大用きざしけれども、
さしあたってしかるべき雪隠(せっちん)も見え申さず、
如何はせんと存ぜしところ、はからずも貴殿の御宅を見受け、
これ幸いと雪隠の御無心に参ったり。
何とぞ御大事のものながら、しばらくお貸し下さらば、
しこたま下してこの苦痛を助からんことを、
生々世々(しょうじょうせせ)の御高恩、ひとえに願い奉る」
と、言う顔さえも青ざめて、ガチガチ震えて頼むにぞ、
呑太夫納得し、
呑太夫 「ハヽア、近ごろの御辛抱、察し入る。
イデ、雪隠(せっちん)を御用立てん。
ヤア/\誰かある、手水鉢(ちょうずばち)に水を入れよ、早う/\」
下手横好 「イヤ/\、お構いくだされるな。
はなはだ早急になって参ったれば、すぐさまこのまま」
呑太夫 「しからばご案内仕らん。
貴殿のお腹くだるとござらば、イザびりついて、朗ござりませ」
・雪隠:便所。かわや。
・朗:すっきり。
こんな折から玄関先、「不時のお客の御入りなり」と、
わめきたてる声につれ、この家の主(あるじ)呑太夫、
衣紋あらため出迎えれば、入り来る客も浄瑠璃好き。
諸事、人形の身振りにて、悠々として座につけば、
呑太夫威儀を正し、

呑太夫 「コレハ/\、下手左衛門横好(へたのさえもんよこずき)どの、
まずもって御健勝で珍重/\」

下手横好 「されば/\、其元(そのもと)にもご安体。
それはともかく、只今それがし、まかり越したは、
チト折り入って其元へ御無心申すことがござるて。
ナントお聞き届け下さりょうや」
呑太夫 「コレハ/\御挨拶。
日ごろ貴殿とは水魚の交わり、申さばお互いのこと。
御用あらば何なりとも」
下手横好 「ホヽヲ、早速の御得心、まずは喜び申し上げる」
呑太夫 「シテ、その御無心とは何の御用」
下手横好「イヤ、特別の事情でもござらぬ。
今日それがし所用あって、御門前をまかり通る折から、
かねて昨夜より虫腹をこうむり、
はばかりながらくだり続け、只今も腹痛はなはだしく、
しきりに大用きざしけれども、
さしあたってしかるべき雪隠(せっちん)も見え申さず、
如何はせんと存ぜしところ、はからずも貴殿の御宅を見受け、
これ幸いと雪隠の御無心に参ったり。
何とぞ御大事のものながら、しばらくお貸し下さらば、
しこたま下してこの苦痛を助からんことを、
生々世々(しょうじょうせせ)の御高恩、ひとえに願い奉る」
と、言う顔さえも青ざめて、ガチガチ震えて頼むにぞ、
呑太夫納得し、
呑太夫 「ハヽア、近ごろの御辛抱、察し入る。
イデ、雪隠(せっちん)を御用立てん。
ヤア/\誰かある、手水鉢(ちょうずばち)に水を入れよ、早う/\」
下手横好 「イヤ/\、お構いくだされるな。
はなはだ早急になって参ったれば、すぐさまこのまま」
呑太夫 「しからばご案内仕らん。
貴殿のお腹くだるとござらば、イザびりついて、朗ござりませ」
・雪隠:便所。かわや。
・朗:すっきり。
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