ど素人、黄表紙をよむ

独学で黄表紙を読み、悪戦苦闘の成果をさらす。恥知らずの野暮天ですみません。

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人間一生胸算用⑯

人間一生胸算用16右

かくて、おばの所で借りた金も、
足と手がガラリと使い切ってしまったけれども、
憎いといって足手を切っても捨てられず、
今はなすすべもなく、いろいろ思案していた。

ところがそこに、
このごろ近所で富くじをとった者がある事を耳が聞き出し、
その金を受け取るところを目が見て帰ると、
気はグッと悪くなり、手に言いつけて、
ある夜、密かにその金を盗みにやった。

しかし、盗み損なって見つけられたため外聞が悪く、
無次郎の体、いまは町内にいられず、
てんでんに諸道具をもち、足めの向くのに任せて、
夜逃げしているとは酷いことだ。

人間一生胸算用16 目口鼻アップ

  目 「詰まらぬものだ、みんなのザマをみたか。
    いい目の寄るところへザマが寄るとは、この事か」

  口 「おらァ、いつそ元手を工面して、
     ちっと汚ねぇが小間物見世でも出すべい」

  鼻 「ナニサ、ビクビクさっしゃんな。
     後ろにゃァ、この鼻が控えている
 
人間一生胸算用16 耳手アップ

  耳 「これ、静かに話しやれ。壁にも俺という事がある」
 
  手 「おらァいっそ、てんぼう正宗が処へ手間仕事にでも入ろう」

人間一生胸算用16 足アップ

  足 「今夜はとんだ寒い晩だ、足袋(たび)を被って来ればよかった。
     俺もこれから、かかとで巾着でも切らねばならぬ」
 
人間一生胸算用16左

かの京伝は、右の始終をとくと見ていたが、
思いがけなくも暫くこの体を住みかにして、
殊に友達の無二郎の体の事であれば、
いかにも気の毒なことだと思う。

しかし意見をしたくても、
当人の体の中にいるのでそれもできず、
これは全く、心が心の居所にいぬゆえの事だと、
鉦太鼓をならして心の行方をたずねた。

   迷子の迷子の 無二郎が心やァイ
     チキチャンチキ チャントコトン

これはしまった。これでは壬生狂言の拍子になってしまう。

  京伝 「足のつま先から背中あたりまで二、三べん尋ねたが、見えねえ。
      無二郎かけて逃げるそうで、この国が豪気な地震だ。
      ここらはスジが多くて歩きにくい。サツマイモなら全くダメだ」



俺がひかえている:掛け取りや追っ手の襲来に鼻を利かせて備えている、という意味。
    
壁にも俺:諺「壁に耳あり、障子に目あり」とかけている。

てんぼう正宗:浄瑠璃《新薄雪物語》の登場人物・団九郎のこと。
        団九郎は伝説の刀工・正宗の出来の悪い息子で、
        父の正宗から手を切り落とされてしまう。
        手首から先がない手→手ん棒→「てんぼう正宗」と呼ばれるようになった。

巾着を切る:スリをする
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野暮天のサチ

Author:野暮天のサチ
江戸のおもしろ文学『黄表紙』を読み始めて1年余り。
ど素人の独学なので試行錯誤中ですが、あまりにも面白いので、みんなにも「黄表紙読み」をお勧めしたいと思ってブログをはじめました。

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