ど素人、黄表紙をよむ

独学で黄表紙を読み、悪戦苦闘の成果をさらす。恥知らずの野暮天ですみません。

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人間一生胸算用⑪

人間一生胸算用11

「ほんに気がつかなんだ。
 女郎買いに肝心の手がなくては、ならずの森のオナガ鳥」と、
皆とりどりに言うので、気はなるほどと思いさっそく手をよびにやる。

そもそも手というやつは、
コキ使われるばかりであまり楽しみのないものなので、 
ここへ来ることは来たけれども、
他の者のように面白味もない。

ただ、お大尽の気が持っている花紙袋へ
遠慮なく手をつっこんで、 
太鼓、茶屋、やり手、若い者に祝儀をやり、
嬉しがらせて楽しむだけだった。

それから、床におさまると、
口は気のそばに付き添って、ここぞ我が働きを見せるところと
いろいろイラヤシイことを言ってやれば、 
女郎も大尽と見たので初会から面白おかしくもてなし、
末は大口説となり、女郎から
「もしえ、誠があらば、彫り物をしなんしョ」
と言われ、気がグッと甘くなり掘る気になると
無残や、手は背中へ「なにがし一心命」と
古風な雅名をほられる。

  口 「宵から聞きづめで 口がいっそ少なくなった。
     しかし俺から先に生まれたから、洒落させては負けはしない」

人間一生胸算用11 手のアップ

  女郎 「卑怯な。ジッとしていなんし」

  手 「俺が卑怯より、手前ェたちが卑怯ばかりするのだ。
     アア痛い、痛い!
     灸さえ嫌って据えぬものを、何も来ずともよかったのに。
     名をほりて血かたまるとは、俺が背中の事だ」 

手は退屈して、頭で(けん)をする。
「ちへさやァ」「ごうさい」

  茶屋 「昔、関羽は碁をうちながら腕の骨を削らせたというが、
      お前は拳をうちながら掘りものを掘らせるとは、
      豪傑、豪傑。」
  


ならずの森のオナガ鳥:「できない」という意味の地口。
             なお、地口についてはプチ解説「江戸の流行語 地口」を参照されたし。
            (この頁の背景の屏風絵に尾長鳥の絵があるのに注目^^↓)
             人間一生胸算用11 オナガ鳥

花紙:吉原で使われていた超高級ティッシュで、
    それ自体がご祝儀として利用されていた。

太鼓:幇間(太鼓持ち)のこと。
    宴席で遊女と客の間を取り持つ役回りをし、彼自身が芸人でもある。

茶屋:お座敷屋の主人。ちなみに茶屋

やり手:茶屋や遊郭のご意見番。かつて女郎だった人がやる仕事。
     俗にいう「やり手ババア」とはこの人のこと。

若い者:茶屋の男性従業員

初会から~:吉原の高級遊女は、初会の客とはいきなり寝ないで、
       何度か会って経済状態や人柄などの様子を見てから
       旦那にするかどうか決まるのが普通だった。

大口説:口説くこと、または痴話喧嘩。
     馴染みの客(旦那)になる・ならないの激しい攻防があったのであろう。

彫り物:吉原は「夫婦ごっこ」の場なので、
      客が別の女郎に浮気するのはご法度。
      このため、女郎は金持ちの客は自分の馴染みにしようと必死になり、
      男客も吉原の通であることは大変自慢になるため、
      ○○命などと掘るのが流行した。

名を彫りて血かたまる:「雨ふりて地かたまる」にかけた洒落。
   
:じゃんけんや野球拳の先祖みたいな遊び。
   中国(呉)から伝わり、酒宴で盛んに行なわれた。
   掛け声やアクションなどいろいろな種類の拳があったらしく、
   土佐の「はし拳」が今でも有名。

昔、関羽は~:三国志に出てくる英雄・関羽は、毒矢が刺さった腕を治療する際、
          碁をうちながら腕を切り骨を削ったと言われている。
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野暮天のサチ

Author:野暮天のサチ
江戸のおもしろ文学『黄表紙』を読み始めて1年余り。
ど素人の独学なので試行錯誤中ですが、あまりにも面白いので、みんなにも「黄表紙読み」をお勧めしたいと思ってブログをはじめました。

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