ど素人、黄表紙をよむ

独学で黄表紙を読み、悪戦苦闘の成果をさらす。恥知らずの野暮天ですみません。

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人間一生胸算用⑨

人間一生胸算用09右

気は大勢にさんざん持ち上げられ、無性に気が大きくなり、
ある日、口を袖につれて向島の武蔵屋へ来て、
無闇やたらにおごりまくった。

口は、生まれてから初めてこんな美味いものを食い、酒もやたらに飲んで、
大いに鋭気はぐんぐん違ってきて笹の葉を担いで踊る。

酒を「きちがい水」というのは、これが所以であろうか。

気が、壬生狂言にきつねの憑いたような手つきをして踊れば、
口は、コケが心学を習うように茶碗をたたいて囃す。

  女給 「鯉のあらいも出しましょうか」

  目 「赤ら顔の小娘が呉服屋へ行ったように
     いっそ目移りがする」

人間一生胸算用09左
それから、気はいよいよ気がそれ、
「目にも美しいものを見せ、 
 鼻にも掛け香のあだな匂いを嗅がせよう」と
中ノ丁の夕景色を見せますと、
目・口・鼻、三人よって凡夫の知恵を出し、
気をすすめて、中でイッチ美しい人と思しき花魁を揚げさせにやる。
口はよだれを垂らして見ている。

  鼻がいう「アア、いい匂いだ。百助のところのクコをつけたそうだ。
       ちっと、小菊で鼻をかんで嗅ぐべい。
       今まではチリカミよりほかでは、かまなんだ」

目は正月を三度いっぺんにする気分で、
目のさやを外して眺めている。 



武蔵屋:向島の著名な料亭。鯉料理が名物。
     俳諧や狂歌の会が頻繁に開催されるなど、
     組連の集まるサロン的な使われ方もしていたようだ。
     ちなみにここの座敷で行なわれた「宝あわせの会」というアホ企画から、
     江戸落語が発祥したとのことである。

掛け香:におい袋。調合した香を絹の袋に入れ、女性が身につける。
      吉原では部屋の中にも掛け香が吊るされていた。

中ノ丁:吉原のメインストリート。
      暮六ツ(午後6時)の鐘とともに夜見世が始まるため、
      三味線が鳴り、張見世(女郎が格子の内側に並ぶ)がおこなわれ、
      一斉に賑やかになり、男どもは気もそぞろになった。
      葛飾応為「吉原格子先の図」(←参考に。葛飾応為「吉原格子先の図」)

百助:小間物屋「紅屋百助」と思われる。
     「紅屋百助」は浅草の駒方堂の筋向かいにあり、
     白粉(おしろい)や紅などの化粧品を商っていたようだ。

クコ:クコ油。香料として利用されていた。
     
小菊:廓に置いてある紙花(超高級ティッシュ)。
    小菊紙は茶屋や遊郭の人々へのご祝儀としても利用された。

目のさや:まぶたのこと。


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野暮天のサチ

Author:野暮天のサチ
江戸のおもしろ文学『黄表紙』を読み始めて1年余り。
ど素人の独学なので試行錯誤中ですが、あまりにも面白いので、みんなにも「黄表紙読み」をお勧めしたいと思ってブログをはじめました。

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