ど素人、黄表紙をよむ

独学で黄表紙を読み、悪戦苦闘の成果をさらす。恥知らずの野暮天ですみません。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

桃太郎発端話説(ももたろうほったんばなし)②

慳貪婆と実方。婆の形相がすごい

その頃、中将実方(ちゅうじょうさねかた)という人が天皇の怒りをこうむり、
みちのくの方へさまよって来られた。
そうでなくても旅は憂きものなのに、
実方卿は歩きなれない山坂と飢えに苦しんでいたので、
慳貪婆の家に立ち寄り、食物をお求めなさった。

しかし慳貪婆は、
もとより情け容赦のない者なので、
食べ物を差し上げず、
気の毒にも追ったててしまうとは、不敵なことだ。

実方は
「こう、腹がへりま大根ときては、ふと印といわれても
 あとへもさきへも行くことは、ならずの森のみそさざい」と
 ひとりつぶやいていらっしゃる。

慳貪婆「こっちのがにっちもさっちもいかず
    てんやわやときているものを、クソいまいましい。
    まったく内裏雛の店(たな)さらしと来たわ。」 
  
正直な夫婦はこのていを見て、お気の毒に思い、
実方をわが家にともなって
色々と労わりの言葉をかけるとは、優しいことだ。


正直夫婦に桃をめぐんでもらう実方

正直夫婦「なんぞ差し上げたくはございますが、
     東(あづま)の果ての山ときておりますので
     ひきの屋のどらやきさつまいもや、四方の瀧水(よものたきすい)というような場所も、
     なしの切り口という具合です」
   
    「これは、せどになった桃でございます。
     これでもお持ちになって飢えをおしのぎなされませ。
     まったく、おいたわしや、おいたわしや」

うまいももや かわいのももやとは、
故人はくえんのお定まりかえ。

 実方「これはまったく美味そうな桃じゃ。
    しかし大の痛事(いたごと)、近年の大当たりと来たわ」




【注】
中将実方:藤原実方。平安時代の貴族で有名な歌人。
       歌についてのもめごとで天皇の怒りをかい、陸奥守として東北に飛ばされた。

「腹がへりま大根ときては…」:高貴な公家がこんな汚い地口を使ってるというギャグ。
   腹がへりま大根ときては=腹がへったときては
   ふと印といわれても=図太い人だと言われても
   ならずの森のみそさざい=できない

内裏雛の店さらし:売れ残った内裏雛。

「ひきのやのどらやき~」:この下りは要するに、
             田舎だから洒落た美味い食べ物も銘酒もない、と言ってる。

どらやき さつまいも:美味しいものを表す地口。
            「ひきのや」はおそらく実在した店の名前であろう。

四方の瀧水:江戸神田和泉町の酒屋、四方(よも)久兵衛の銘酒「瀧水」。
       四方久兵衛では赤味噌も販売していたらしく、
       一杯飲むことを「鯛の味噌吸、四方のあか」という地口も流行った。
       ちなみに四方九兵衛はいまも16代目が赤坂で営業してるようだ。
       (しかし江戸時代の「瀧水」はブレンド酒だったようで、現在は販売していない。残念☆)

なしの切り口:「なし」と「梨」をかけた洒落。
        「梨の切り口」は家紋などによく使われる柄の名前(↓これ)。
         梨の切り口の家紋
うまいももや かわいのももや:桃の美味しさと桃売りの売り声と掛けている。
                文脈的に歌舞伎の台詞とも掛かってるのかも?

故人はくえん:歌舞伎役者の4代目市川団十郎(俳名・柏莚)と思われる。

痛事:痛手。非常につらく困ったこと。
スポンサーサイト

« 桃太郎発端話説(ももたろうほったんばなし)③|Top|桃太郎発端話説(ももたろうほったんばなし)① »

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://kibyosi.blog.fc2.com/tb.php/3-fafd7691

Top

HOME

野暮天のサチ

Author:野暮天のサチ
江戸のおもしろ文学『黄表紙』を読み始めて1年余り。
ど素人の独学なので試行錯誤中ですが、あまりにも面白いので、みんなにも「黄表紙読み」をお勧めしたいと思ってブログをはじめました。

この人とブロともになる

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。