ど素人、黄表紙をよむ

独学で黄表紙を読み、悪戦苦闘の成果をさらす。恥知らずの野暮天ですみません。

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江戸の流行語・地口

地口とは、江戸時代の流行言葉で、
例えば「当たり前だ」を「当たり前田のクラッカー」と面白くして言う、
ああいう言葉遊びのことです。
(ちょっと例が古いですが^^)

江戸っ子は、ちょっとした返事や感情を表現するときに
すばやく"上手いこと"を言って洒落るのが粋でした。
黄表紙発信の地口が芝居のせりふにも取り入れられて、
かなりの数の地口が流行っていたようです。

『桃太郎発端話説』に出てくるものを中心に、
黄表紙に頻出する地口をざっとあげてみます。

ならずの森の尾長鳥=「ならず(できない、承知しない)」
 「尾長鳥」の部分は「大天狗」「村つばめ」などアレンジ表現あり。
ちなみに尾長鳥とは尾長鶏のことではなく、オナガのことらしいです。
 人間一生胸算用11 オナガ鳥 ←山東京伝著 『人間一生胸算用』より、尾長鳥の図


天井見たか=「参ったか」
  ※上記「ならずの森~」とセットで使われることが多い

のみこみ山=「のみこむ(合点する、承知する)」
放下師の小刀、のみこみ印=「のみこむ(合点する、承知する)」
  放下師(ほうかし)は田楽の流れを汲む大道芸人。
  元々は放下僧が仏教の布教の際、人集めのために芸を行なっていたものが、
  門付けの祝福芸として発展したようです(海老一染ノ助・染太郎の芸も放下芸の一種)。
  その放下師の芸の中に小刀を飲み込む奇術があったことから、
  こういう地口ができたようです。
  放下師(元禄3年出版 『人倫訓蒙図彙』より「ほうかの図」

その手は桑名の焼き蛤=「その手はくわない」
  桑名市は三重県。東海道43番目の宿場・桑名宿があり、
  お伊勢参りの人を相手に商売する焼きハマグリ屋が、軒を連ねていたようです。
  桑名の焼き蛤屋(広重)
  (↑歌川広重・画 『狂歌入東海道』より 「桑名 富田立場」)
  
●大根の切り口太いの根=「太い」
●大木の生えぎわ太いの根=「太い」

  「根」を「太い」にかけた地口。
  「~なのね」は地口にかけた皮肉っぽい言い回しとして
  さまざまな作品に登場しています。 
   
●どらやき さつまいも=「旨い」

●四方(よも)の瀧水=「一杯のむ」
  「四方の瀧水」は江戸神田和泉町にあった酒屋、
  四方(よも)久兵衛の店の銘酒「瀧水(たきすい)」のこと。
  ちなみに四方久兵衛は現在も、赤坂で「赤坂四方」として営業しているもよう。
  しかし江戸時代の「瀧水」はオリジナルブレント日本酒だったらしく、
  現在は同銘柄の酒は置いてないようです。残念☆
   ※ここで、当時の瓶の画像だけは見れます。

鯛の味噌吸(みそず) 四方のあか=「一杯のむ」
  「四方のあか」は四方久兵衛(前述)の赤味噌のこと。
  酒屋で大当たりした四方久兵衛が居酒屋営業を展開した際に
  赤味噌を酒のアテとして販売していたようです。
  「鯛の味噌吸」は味噌仕立ての鯛のお吸い物(=鯛のみそ汁)。
  これも恐らく、例の赤味噌で仕立てたものではないかと思われます。

●一杯飲みかけ山の寒ガラス=「一杯のむ」

また、数ある地口のうち
「~~山」「~~印」、「~の森」は汎用性の高い言い回しで、
「ぶっちめ印」「(腹が)へこつき山」など、いろいろな動詞の後にくっつけて使われます。

ちなみに、私は近世文学の研究者でも何でもない一介のど素人なので、
それぞれの地口の意味が分かるまでは、
訳するのにいちいち意味を調べたりしてちょっと大変でした。
「"ほうかし"ってなに?放火師??」なんて具合だったもので^^;

上記程度の地口を押さえて読むと、
黄表紙を読むのがかなり楽しく(+楽に)なるんじゃないでしょうか☆
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野暮天のサチ

Author:野暮天のサチ
江戸のおもしろ文学『黄表紙』を読み始めて1年余り。
ど素人の独学なので試行錯誤中ですが、あまりにも面白いので、みんなにも「黄表紙読み」をお勧めしたいと思ってブログをはじめました。

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