ど素人、黄表紙をよむ

独学で黄表紙を読み、悪戦苦闘の成果をさらす。恥知らずの野暮天ですみません。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

桃太郎発端話説(ももたろうほったんばなし)⑩

10右(小)

君子は人の幸福を喜んで、うらやむ心はない。
おのれの目的を達せんと欲すれば、まず人を達せようとするものだ。
小人(しょうじん)は人の幸福を憎んで、自分はより貪ろうとする。
このせいで善を遠ざけて、賢をにくむ。

慳貪婆の欲の張りつづらは、
罪の重いこと、つづらより甚だしい。
心の欲の背負い紐につながれて、
罪をつづらとともに負っているのだ。

子ども衆よ、ここらがよい目のつけどころじゃが。
がてんか、がてんか。

  慳貪婆「まったく重いつづらだ。
      何でもこの中の宝を瀬しめうるしとでて、
      どらやきさつまいもの食い飽きをしましょう」

舌切りすずめは「おとといきやれ」と
おばばをゲチゲチに取り扱って、あとへ塩をまく。

  慳貪婆「なんと、おれの姿は『袖鏡』の庵室の段、軍助もどきと見えようがや」


10左(小)

慳貪婆は重いつづらを持ち帰ったが、一体このつづらは、
筑羅が沖で拾った悪魔外道を閉じ込めておいたつづらなので、
蓋をあけるまでもなく、たちまち中よりメリメリとつづらを壊し、
異形の鬼神あらわれ慳貪婆を宙につかんで、
鬼ヶ島へ飛んでいくとは、とんでもない次第である。

『宇治拾遺』にこんな一節がある
 「今はむかし、女あり。
 すずめのケガしたるを養いて放ちければ、
 恩を報うため、ひさごの種をくわえ来たる。
 その種を植えたるに、ひさご多く出きて、みな内に白米あり。
 となりの女、これをうらやみ、無理にすずめにケガさせて養い放ちけるに、
 そこのすずめもひさごの種をくわえ来たる。
 植えければ、はたして出きにけり。
 さて、ひさごの内より毒虫おおくいでて、
 かの女をいたく刺しける」

このつづらも、例のふくべより出てきたという話だ。
もの羨みはするもんじゃない。

  鬼「ももんがぁなんと言うような、怠けたことではない。
    アァ、ツノもねえ。

  慳貪婆「こう吊るしあげられては、
      そっちの鬼身よりこっちのこめかみが、いた印いたいのねと来たわ。
      アァ、助けたまえ、助けたまえ」

  鬼「なんと、凄まじかろうがや」



【注】
『袖鏡』の庵室の段
    芝居や浄瑠璃の演目『菊池大友姻袖鏡』(きくちおおとも こんれいそでかがみ)のこと。
    庵室の段で、姫が中に入り隠れているつづらを、
    家来が背負って立ち回りするシーンがある。
    姻袖鏡(こんれいそでかがみ)庵室の段
   (↑昭和3年出版 『日本戯曲全集』第28巻歌舞伎編 『菊池大友姻袖鏡』より)

宇治拾遺:宇治拾遺物語の『腰折れ雀』のお話。
       『腰折れ雀』の強欲婆さんのひょうたんから、鬼の葛籠は出てきたらしい。

ひさご:夕顔。ひょうたん。

ふくべ:ひょうたんの中をくりぬいて作った器。

ももんがぁ:妖怪ももんがぁ。
       白い肉塊のようなものに短い腕脚が生えており、
       四つんばいで動き、小さな目と鼻がついている。らしい。
       妖怪ももんがあ 
      (↑『しん板 化物尽し』より 「ももんがぁ」の図  画/歌川芳盛)

       
スポンサーサイト

« 桃太郎発端話説(ももたろうほったんばなし)⑪|Top|吉祥文様と宝物について »

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://kibyosi.blog.fc2.com/tb.php/12-30702897

Top

HOME

野暮天のサチ

Author:野暮天のサチ
江戸のおもしろ文学『黄表紙』を読み始めて1年余り。
ど素人の独学なので試行錯誤中ですが、あまりにも面白いので、みんなにも「黄表紙読み」をお勧めしたいと思ってブログをはじめました。

この人とブロともになる

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。